スキャナーの隠れコストに困っていませんか?
今ではスキャナーはプリンターと同じぐらい普及しています。日常的に使用しているオフィスも多いでしょう。しかし数枚程度のスキャニングならともかく、体系的に大量のスキャニングをするとなると、スキャナーの性能とは別のいろいろな問題が出てきます。
スキャンニングとは

スキャニングとは、紙の保管文書や配布書類をスキャナーと呼ばれる機械で読み取り、PDFなどのデジタルの画像データに変換する作業のことです。
スキャニングのメリットと新たなデメリット

スキャナーはかつては高額な機械でしたが、現在は安価なものも多く普及していることから、コピーやプリンターによる印刷と同じように、どのオフィスでもスキャニングを行うようになりました。紙のドキュメントをそのまま保管しておくことにはデメリットが多いからです。
紙のドキュメントのデメリットには以下のようなものがあります。
- 保管スペースが膨大になる
- 紙の傷み、劣化
- 火災などの災害による紛失の恐れ
- 持ち出しによる紛失の恐れ
- セキュリティの維持が難しい
- 廃棄時の確実性の担保にコストがかかる
これらの問題を克服するために生まれたのがスキャナーでした。安価で手頃なスキャナーが普及したので、これらの問題は克服されたかのように見えました。しかしスキャナーの普及は、いくつかの問題点を発生させることになりました。
- スキャニング業務にかかる時間やコストの増大
- 分類や保存が作業者各自に任され、作業の品質が下がる。
- セキュリティや破棄に関するリスクが返って高まった。
確かにスキャナーは便利な機械です。そして紙が電子化するというのは圧倒的な技術的恩恵というものでしょう。しかし、本来は紙であろうと電子データであろうと、文書を整理するという業務には周辺的な業務が付随しているものであり、それらは本来正当なコストなのですが、安価な機械が普及したことで一人ひとりの雑務に紛れ込んでしまい、見えないコストになってしまったと言えます。見えないコストになったために、トータルコストの増大や、品質低下や、リスク増大もまた見えにくくなってしまいました。
スキャニングの手順

スキャンニングは、前工程、中工程、後工程に分かれます。
前工程は紙の原稿をスキャナーにかけることのできる状態にするところまでです。中工程はスキャンニング作業そのもの。後工程はスキャンニングが終わった後のファイルや紙ドキュメントの処理です。
スキャニングという場合、まずスキャナーを想像してしまって中工程だけをイメージするので、前工程と後工程にかかるコストが見えないコストになってしまっています。
では各工程を更に細かく見ていきましょう。
前工程:紙原稿をスキャナーにかけられる状態に持っていくまで
事前に文書を調査し、文書の保存状況、量、劣化状態などを把握します。電子化した後の目的によって、色、解像度、保存形式などが変わってきます。(常にPDFが良いとも限りません。)そして、機材や作業スペースや人員の数を見積もり、必要なリソースを手配します。
見えないコストはこの段階での知識取得に要するコストです。
次に、原稿を一か所に集めます。一人の机レベル、会議室を数日占拠するレベル、特別な作業部屋が必要なレベルなど、どの程度の作業スペースが必要かは作業量次第です。またどのようなスキャナーが必要かも原稿の内容によって決まってきます。スキャナーが普及したとは言え一人一台もあるオフィスも少ないと思いますので、多くの場合スキャナーの数とその性能がボトルネックとなります。これらのボトルネックの処理能力に合わせる形での作業ラインを設計する必要があります。
また、文書によっては持ち出しが禁止されているものもあります。そのためその文書のあるところで作業をしなければいけない場合もあります。
最後に、スキャン前に整理作業をします。ホッチキスやクリップを外し、サイズ別などに仕分け、折れ曲りを直し、付箋の有無を確認します。この作業の丁寧さがスキャン後の仕上がり品質を左右します。また、書籍であれば断裁をしますし、必要ならば別途ナンバリングを行います。
この作業は一人または同じ部署の数人でできる程度の量ならばあまり問題はないのですが、大規模なスキャン作業となると問題がたくさん出てきます。人力でやらざるを得ないので人手をかき集めるのですが、そうするとスキャン作業に慣れている人と慣れていない人や業務分野に知識のある人とない人で差が出るからです。その差を埋めようとしてマニュアルや手順書を作りさらにコストが嵩んでしまいます。
中工程:スキャンニング
実際に原稿をスキャナーに読み取らせます。
スキャナーが複数台ある場合は原稿のサイズや厚さや色や劣化具合を考慮して適切な機材を選びます。スキャナーには、1枚ものの原稿を連続して読み取るのに向いているが厚みのある紙や不定形の紙に弱いシートフィードスキャナーと、ガラス面に原稿を伏せて下から光を当てて読み取るフラットヘッドスキャナー、原稿から離れた場所で撮影するように読み取るスタンドスキャナーの3種類があります。プリンターや複合機に付属しているのはフラットヘッドスキャナーで、シートフィードスキャナーとスタンドスキャナーは専門の機械が必要です。
この工程の速度や品質は機械に依存しますし、例えば枚数があるのでシートフィードスキャナーが必要だから購入しようとかいうようにコストも明瞭です。したがって、隠れコストという観点からはあまり問題がありません。
後工程:スキャンニングが終わったあとの処理
スキャンニングが終わったらまずは検査をします。スキャンニング漏れや重複がないか、折れ曲りや傾きの歪み、上下逆さまになっているといったことがないかを確認していきます。この部分の丁寧さが品質を左右します。また、実際に問題があったときに、その原因が前工程のスキャン前整理作業に起因するのか、中工程のスキャンニングそのものに起因するのかといったことも追求してフィードバックしなければなりません。
次に電子ファイルの編集作業を行います。ファイル形式を合わせたり、ファイル名を予め決められた命名規則に則って付番します。そしてこれも予め決められたフォルダ階層に格納していきます。分かりやすさでいうと日本語のファイル名をつけるべきですが、Webでの公開がありうるのならば英語(アスキー文字)を用いたファイル名にするべきですし、並べ替えをしたときにきれいに並ぶようなファイル名の付け方や全角半角も気にする必要があります。
その上で、適切な場所やメディアに保存をして電子ファイルは終了となります。
最後に後整理を行います。紙のファイルをもとに戻す必要がある時は、ホッチキスやクリップで留めたり、製本をしなおして、原状復帰を行います。このとき資料の散逸があってはいけませんので、この作業をどのように進めるかは前工程の段階から考慮しておかなければいけません。
また、紙のファイルを元に戻さずに廃棄することもあります。多くの場合ただ捨てれば良いということはなく、シュレッダーにかけることが要求されますので、シュレッダーの機材準備が必要になります。スキャナーの用意と同じで、どのオフィスにもあるでしょうが、数が多くなると用意が難しくなります。また、個人情報に関わることだと破棄証明などの手続きも、その会社の規定に基づき必要になるでしょう。
このようにスキャンニングというのは、前工程と後工程にかなりの作業が潜んでいます。それは少量のスキャンニングの場合は目立ちませんが、大量作業になってくると大きな負担となります。1枚の紙のスキャンに要する作業を1とすると、100枚の紙のスキャンに要する作業は100以上というわけです。
こんな時は、スキャニングサービスのアウトソーシングを考慮したほうが良いと言えます。